Apple iOS 15の全貌: ASO関連の変更内容
今週初めにAppleが毎年恒例の世界開発者会議を開催し、iOS 15でリリースを予定している多数のソフトウェアの変更など、今年後半に Apple製品に反映される大規模な変更の全体像を発表しました。 一般的にはiOS 12、13、14で導入されたASO関連の変更はかなり限定されていると考えられていました。しかし、iOS 15はオーガニックユーザーの獲得に注力しているアプリマーケターにとって、iOS 11以降で最も重要なリリースになる見込みです。
近年のAppleは主にApp Storeにおけるカスタマーエクスペリエンスの向上に取り組んでいますが、多くの開発者やマーケター (AppTweak のチームを含む) は完璧ではないものの、ニーズに合った独自の機能を提供しているのは Google Play だと何度も発言しています。 現在、Appleはこのような要求に応えようとしているようです。今週の発表により、開発者がApp Store内でクリエイティブ要素に対してA/Bテストを行い、複数ユーザーのコホートに対応したカスタム掲載情報をセットアップし、プロダクトページや店舗全体でApp内イベントを告知できる可能性が生まれました。この記事では発表された内容とGoogle Playとの違いを正確にお伝えしているほか、現状の不明点についても掲載しています。
プロダクトページの最適化: Google Play Experimentsに相当する待望のネイティブ A/B テスト対応
アプリ開発者はアイコン、スクリーンショット、プレビューのテストに最大3種類のバリアントを試せるようになります。参照: apple.com
Appleの発表内容
Appleの発表内容で最も重要なのは、開発者が「最大3種類の処理を試し、最適な結果を得られる要素やメタデータを確認できる」ようになることです。 App開発者はこれまでもサードパーティ製のツールやSearch AdsのCreative Setsを使用し、iOSでスクリーンショットと動画のA/Bテストを実行することはできましたが、ストア内のすべてのトラフィック経路を含むテストの実行は不可能でした。今回の変更により、App Storeのコンバージョン率を改善したい方はすぐに大きな恩恵を受けることができるでしょう。
さらに掘り下げると、Appleはまもなくリリース予定のA/Bテストツールにより、マーケターが最大3つのバリアントを元のプロダクトページと比較し、クリエイティブ要素 (アイコン、スクリーンショット、アプリのプレビュー) のみのテストを最大90日間にわたって実行し、App Store Connectでその結果を利用できるようになるとも説明していました。開発者は全ロケールまたは特定のロケールでA/Bテストを実行し、トラフィックをデフォルトとバリアントの間で分割するように制御できます (すべてのバリアントのトラフィックの割合は同じにする必要があります)。
その他にも興味深い情報があります。すべてのテスト対象アセットはAppleの審査に提出する必要がありますが、開発者はAppを審査に提出することなく、テストしたいスクリーンショットとAppのプレビューを提出できるようになるとのことです。ただし、App Store用のアイコンだけは例外です。開発者はすでに元のApp Storeアイコンについて実施した時と同じように、代替となるアイコンをAppのバイナリに含めて提出する必要があります。
Google Playとの違い:
バリアントの最大数はGoogle Play Experimentsと同じ (3つ + 元のバリアントで最大 「A/B/C/D」テストを実行可能) ですが、開発者とマーケターはクリエイティブ要素のみをAppleでテスト可能で、Appのタイトル、サブタイトル、説明は対象外であるという点が大きく違います。
また、テストアセットがAppleのチームによって審査されるという点も違います。このプロセスは、概してGoogle Playとは異なっています。最終的な製品では他にも違いが生まれる可能性がありますが、Appleがストアテスト機能に関する詳細を明らかにするまでは分かりません。
現状の不明点
Appleが提供を予定しているA/Bテストソリューションに関する主な不明点は、次のように同時テストと結果の信頼性に関するものです。
- 開発者がApp Storeで同時に実行できるテストの数はどれくらいなのか?AndroidのGoogle Play Experimentsでは掲載情報ごとに最大 5 件のローカルテストか、1つのグローバルテストを使用できます。 現時点では、Appleがそれ以上の同時テストを実行可能にするかどうかや、カスタムプロダクトページとの具体的な互換性は不明です。
- 信頼性に関して。Appleの新製品がより高い信頼性を実現できた場合、Google Play Experimentsは大きな打撃を受ける可能性があります。Google Play Experimentsは標準を下回る90%信頼区間 (95%信頼区間をA/Bテストの最低要件と見なした場合) を提供していることがよく知られています。Appleがそれを上回る信頼性を提供するのであれば、Googleの反応はかなり注目を集めることでしょう。ただし、現時点ではまだ何とも言えません。Appleはベイズ統計手法がテストに使用されると発表したものの、開発者がどの程度の信頼度を期待できるかどうかは詳しく伝えられなかったためです。
今年のWWDCで開催された特集セッションで、Appleから発表されたすべての情報を確認できます。
カスタムプロダクトページ
iOS 15では、App開発者は最大35件のカスタムプロダクトページを作成し、プロダクトページのクリエイティブ要素を特定の広告キャンペーンやユーザーペルソナにマッチできるようになります。引用: apple.com
Appleの発表内容
Appleからのもう一つの重要な発表内容は、カスタムプロダクトページです。これは、開発者が「App Storeプロダクトページの追加バージョンを作り、App […] 内のさまざまな機能やコンテンツを紹介することで、それぞれの分野に最も興味を持っているユーザーにリーチ” できるようにするものです。」このようなカスタムページには、「デフォルトのプロダクトページとは異なるプロモーションテキスト、スクリーンショット、Appのプレビュー」が含まれ、一意のURLからアクセスできるようになります。 最後の点には特に魅力を感じます。なぜなら、このようなページはアクセスがAppとWebの参照トラフィックに限定されることになり、目的が決まっているためにマーケターが広告キャンペーンのパフォーマンスを高めるのに役立つと思われるためです。 Appleがカスタムプロダクトページをリリースすることで、FacebookとGoogleの両方が大きく影響を受ける可能性もあります。どちらの広告ネットワークでも、広告主はすべてのAppのインストールキャンペーンに単一のストアURLを提供する必要があるためです。
AppleはWWDC 2021の特集セッションで、開発者がカスタムプロダクトページごとのインプレッション数、ダウンロード数、コンバージョン率、収益、リテンションを測定できるようにするApp Store Connectのアナリティクスセクションを発表しました。また、開発者は最大35件のカスタムプロダクトページを公開し、アップデートとは別に審査に提出することができます。
Google Playとの違い:
Appleの機能はGoogleのストアのカスタム掲載情報に非常に似ているようですが、現時点でも次のような複数の重要な違いがあります。
- Appleのカスタムプロダクトページが最大35件であるのに対し、Googleのストアのカスタム掲載情報は最大5件であるため、不十分に見えます。 この違いは実際には微々たるものですが、開発者はAppleがより多くのカスタマイズの可能性を提供することを歓迎すると思われます。
- ただし、最も大きく違う点は別にあります。それは、カスタムプロダクトページに対するAppleのターゲティングシステムです。Googleのストアのカスタム掲載情報が位置情報 (国) またはインストール状態に基づくユーザーのターゲティングのみが可能であり、ターゲット内のすべてのストアユーザーに表示されるのに対し、Appleのカスタムプロダクトページはストア外から流入する顧客のみに表示できます。このため、参照元のユーザーをターゲットにすることが課題になります。つまり、開発者は同じ国で複数のカスタムプロダクトページを使用し、さまざまなユーザーペルソナの関心に合わせることができるようになります。ただし、このターゲティングがストアのトラフィックに影響することはありません。
- 最後にもう一つだけお伝えしたいことがあります。それは、Appのアイコン、タイトル、サブタイトルをカスタムプロダクトページに合わせて変更できないため、カスタムプロダクトページをデフォルトのプロダクトページとまったく異なるものにすることができないということです。 Appleはこの制限を緩和するため、スクリーンショットと Appのプレビューに加えてプロモーションテキストを調整できるようにするものと思われます。ただし、開発者はAppのタイトルとサブタイトルがオーガニックユーザーと有料ユーザーの両方のコンバージョンに与える影響を引き続き意識する必要があります。
現状の不明点
より大きな疑問はあと数週間は解消しないと思われます。例えば、FacebookやGoogle などの特定の広告ネットワークが自社のプロダクトをどのように調整してこの新しい機能に対応するのか、といった疑問が挙げられます。 広告主はApple Search Adsにも注目しておく必要があります。なぜなら、Appleがサードパーティのインベントリの提供を開始したことに気付いたベータテスターがいるためです。Appleがそれをカスタムプロダクトページ互換の最初のインベントリにすることで、最新のインベントリにメリットを与えようとしても不思議ではありません。
App内イベント
iOS 15では、開発者がApp Store Connectで作成できるApp内イベントカードを採用しています。 このカードは、プロダクトページ、App Store の検索および閲覧で表示されます。引用: apple.com
Appleの発表内容
多くの人気アプリやゲームがユーザーベースを維持し、新規顧客を獲得する目的で定期的に新しくタイムリーなコンテンツを提供しているため、AppleはGoogleの後に続いて開発者が App Store内でイベントをプロモーションする機能を提供する予定です。 それに伴い、開発者はApp Store Connectコンソールでイベントカードを作成し、特別なメタデータをアップロードできるようになります。ユーザーはAppのプロダクトページやApp Storeの検索と閲覧でイベントカードを発見します。
イベントをアップロードするには、開発者が地域別の配信可否を指定し、イベントへのアクセスがApp内購入またはサブスクリプションを条件としているかどうかを明確に示し、次のようなイベントの特定のメタデータを入力する必要があります。
- イベント参照名。App Store Connectにのみ表示され、App Storeには表示されません。
- イベントバッジ (イベントの種類)。チャレンジ、コンペティション、ライブイベント、メジャーアップデート、新シーズン、新作、スペシャルイベントの中から選択できます。
- イベント名 (30文字以内)
- 簡単な説明 (50文字以内)
- 120文字以内の長い説明。顧客はイベントカードを展開した場合にのみ詳細を読むことができます。
- 画像またはポスターフレームを含む30秒以内の動画
- ユーザーがカードを展開して詳細を表示する場合の別の画像または動画 (30秒以内)。
また、開発者はイベントの開始日と終了日、App内イベントにユーザーを直接案内するためのディープリンク、イベントの対象ユーザーグループ (新規ユーザー、アクティブなユーザー、または中断しているユーザー) の表示、App Store Connectにも登録されている他のイベントと比較したイベントの優先度 (開発者は ‘通常’ および ‘高’ いずれかの優先度を選択し、最初に表示するイベントを指定できます。各グループ内のイベントは開始日で並べ替えられます) など、イベントカードに詳細な情報を追加で設定することもできます。
開発者はAppを審査に提出することなく、イベントをAppleに審査させることができるようになります。また、ストアの外でイベントを告知するためのイベント URL も提供されます。 さらに、開発者はストアコンソールで一度に最大10件の承認済みのイベントと最大 5 件のライブイベントが許可されます。 各イベントの開催期間は15分から31 日の範囲で設定可能です。イベントは終了後30日間はイベントURLからアクセスできますが、イベントカードはイベントが終了した時点でApp Storeに表示されなくなります。
見やすさを考慮し、プロダクトページではAppleが承認済みのイベントカードはAppをインストール済みのユーザーにはスクリーンショットの上に、その他のユーザーの場合は下のほうに表示されます。検索結果の場合、インストール済みのAppを検索しているユーザーにはスクリーンショットの代わりにイベントカードが表示されます (未インストールのユーザーには通常のスクリーンショットかAppのプレビューが表示されます)。 ユーザーがイベントを検索した場合は、Appとイベントカードの両方が表示されます。 さらに、Appleは「Today」、「App」、「ゲーム」の各タブでイベントカードをエディターのおすすめとして表示します。 パーソナライズ機能も最後の2つのタブにイベントを表示します。ここで表示されるイベントは多くの場合、その対象がアクティブなユーザー、中断しているユーザー、または新規ユーザーであるかどうかにとって決まります。
Appleは「インプレッション数、イベントページの閲覧数、エンゲージメント、コンバージョンデータや、イベント開始時の通知を選択したユーザーの数」などの新しい App Store Connectメトリックスも開発者に提供します。
Google Playとの違い:
今後リリースされる予定のこの機能は、GoogleのLiveOpsカードと非常によく似ているのは間違いありません。ただし、使用できるのはスペイン、中国、ラテンアメリカ諸国といった特定の大規模市場を含まない17のGoogle Playマーケットのゲームだけです。
これら2つのストアでは個別のイベントタイプも異なっていますが、基本的な考え方は非常によく似ており、AppleとGoogleはいずれも新しい既存アプリの活用方法を開発者に提供し、アプリを定期的にアップデートしている開発者への露出度を高める取り組みを強化していることは明らかです。
現状の不明点
この機能に関する主な不明点は、App Storeの検索とおすすめの機能への影響です。
- 検索に関しては、イベントカードのメタデータが検索での露出を増やすための新しいキーワードとして位置付けられると考えるのが妥当だと思われます。しかし、App内購入パッケージ名の前例を考えると、このようなやり方がうまく機能するかどうかは Apple の次のアルゴリズムの更新次第だと思われます。
- おすすめに関しては、いくつかのAppコレクションの名前がAppleが発表したイベントバッジ (メジャーアップデート、スペシャルイベントなど) に似ていることは注目に値します。 Appleは明確に言及しませんでしたが、おすすめのイベントを選考している編集チームは、新しいイベントを定期的にアップデートすることで、Appがこのような App コレクションや他の種類のストアのおすすめに登場する可能性が高まることを示唆しているように思えます。
予想される変更: Appアナリティクスと新しい検索結果 UI
これらの3つの機能はASOに関連するWWDC 2021での主な発表内容ですが、iOS 15ではさらに多くの変更が行われる予定です。
まずは論理的な変更として、A/B テスト、カスタムプロダクトページ、App内イベントに関してApp Store Connectに新しい指標が追加されます。これは、次のようなApple が発表したいくつかの新しいメトリックスによって補完されます。
- 再ダウンロード数
- 合計ダウンロード数
- 収益データ
- ARPPU: 購入ユーザー 1 人あたりの平均収益
- 予約注文数
- アップデート数
App Store Connectのアナリティクスセクションには、Mac OSでのAppのパフォーマンスメトリックス (iPhone および iPad アプリを macOSで自動的に利用できるようになりました)や、カードの閲覧数、インストール数、セッション数、クラッシュ数などの App Clips 固有のメトリックスも含まれるようになります。
また、ストアの検索結果UIに関係する変更も行われます。UIにApp内イベントカードが表示されるようになり、Appをインストール済みのユーザーとまだダウンロードしていないユーザーとでは表示内容が変わります。 この変更は、App内イベントの発表時に「ユーザーがある App を検索する際、Appをダウンロード済みのユーザーにはAppと共にイベントカードが表示され、まだダウンロードしていないユーザーにはスクリーンショットが表示される」とそれとなく伝えられました。
iOS 15の検索結果ではインストール済みのアプリのスクリーンショットが非表示になり、新しいアプリを発見しやすくなります。引用: @ilyakuh
また、iOS 15のベータユーザーは、ASO StackのSlackで共有されている上記のスクリーンショットで確認できるような変更をすでに発見しているようです。
Appleは最近、iOS15に加えてASOに影響を与えるいくつかの重要な機能を発表しました。例えば、以下の機能があります。
- App Storeでのクリエイティブ要素のA / Bテスト
- カスタムプロダクトページ
- App内イベント
AppTweakは、これらの変更 (および判明していない変更) がASOに与える影響を早く知りたいと思っています。ASOブログの重要な更新にご期待ください。
データ サイエンスを活用したアプリやゲームのための代表的なASOツールであるAppTweakで、トレンドやASOに関する有益な分析データを発見しましょう。